内蒙古からチベット7000キロの旅⑬ 天然の塩を掘る
8月23日の朝、招待所の庭に出ると、ボタ山が3つあった。それが塩の山であることに気づくには、灰色であったがゆえに、しばらく時間を要した。
ジランタイには中国最大の国営採塩場かある。その現場を工場の係員に案内してもらった。
採塩場は町はずれから続いていた。無尽蔵といわれる塩が地表をおおっている。小は砂、中は大豆、大は親指ほどの結晶が、1メートル以上も層になっている。その粒は、まるでダイヤモンドのように透明で堅い。表面は土と混ざって灰色をしているが、中で溶解した塩が水とともに下から噴き上げた穴が無数にあり、噴火口のような白い口がある。そのせいで大地は白っぽく見える。空は青く、かげろうがゆらりゆらり立ち昇る。空気がかすみ、遠くの山かぼんやり浮いて見える神秘的な光景である。
ジランタイの塩湖は東京都の半分くらいの広さだが、いま採塩しているのは120平方キロメートルで、10分の1くらいの範囲だけである。
塩が粒状になった層は、土にまみれて灰色になっている。それを大型の砂利採り機で、水や土とともに吸い採り、塩の粒だけを選別して取り出している。次から次にやってくるトラックの荷台に、止まることなく流れ込み、製塩工場に運び込む。
この標高1000メートルもある広大な塩湖には、まだ発見されていないどれだけの未知な物が存在しているのかわからない。近い将来、ここには大きな化学工場か作られるにちかいない。
ジランタイから南のアラシャンの町に向かった。途中の道沿いで西瓜と黄色い瓜を買って食べた。乾燥して熱かったせいか、その味は格別で、砂漠でしか味わえないもののように思えた。
午後2時すぎ、オーラン山の西麓にある人口5万ものアランシャンの町に着いた。空気が乾燥して、鼻や唇の粘膜がヒリヒリ痛む。2~3階の建物が並ぶ近代的な街の食堂に入った。まず最初に注文したのはビールだった。生ぬるいビールにすっかり慣れて、舌で味わいながら飲んだ。地方にはまだ冷蔵庫が普及していないこともあって、ビールを冷やして飲む習慣がない。