新制中国の望郷編㉜ 雲南省 雲南諸民族の踊り
雲南省南東部の景洪の町には、タイ族にとっての元日の正午前から、シーサンパンナの少数民族が、民族衣装を着飾って集まり、ニッパヤシの広い並木道が約5万人の人で埋まった。そして、民族ごとに集まって、歌い踊るので身動きできないほどであった。
私は、タイ語通訳のタオさん、漢語通訳の呉さんの案内で、大混雑と耳慣れない歌や打楽器の音、それに見慣れない踊りに、少々興奮気味に歩き廻って撮影した。
町の中央にある景洪百貨店前の十字路が、回転交差になっている。ここから四方へ広い並木道が走っているのだが、東側と北側は人で埋まっている。西側はそれほどでもないが、自由市場が開かれている南の方にも人が多い。
いろいろ見て回ったが、最も活発で、豪快に歌い踊っていたのはチンポー族であった。チンポー族は、山岳農耕民であり、お茶を栽培している。景洪から20キロくらいの所にある彼らの村には、樹齢千年を超える茶の木があると言われている。村には「若者宿」があり、自由恋愛で女性が妊娠してから夫を指名する風習があるそうだ。
チンポー族の男たちは、直径60センチの丸木をくり抜いた太鼓を力強く叩き、銅鑼を打ち鳴らし、シンバルを打ち合わせて、かけ声をかける。そして男女ともに足を踏み出し、両手を交互に突き上げながら、かけ声と共に張り切って踊る。
「ヨーソレソレソレソレ・ソーレ、ソレソレソレ、ヨーヨ、ヨーホイ、ソーイソイ」
日本的なこんなかけ声があり、耳に大変なじみやすかった。
次によく目についたのはハニ族であった。ハニ族の男は勤勉で勇敢だといわれ、女性は働き者で銀の飾りを好むと言われている。彼らは水稲と茶を栽培する稲作農耕民である。
彼らの歌は胡弓のような弦楽器を弾きながら、男と女が交互に合唱する。女性はソプラノで、透き通った声が風のように流れる。それに合わせて、民族衣装の娘たちが、チンポー族と比べやや動きが小さく、ゆったりと踊る。
蝶蝶の仮装をしたタイ族の娘たちの踊りは、島根県津和野の鷺舞に似た、ゆっくりした踊りだった。娘たちは両手をゆるやかにあげたり、さげたり、回したりして、日本舞踊に似た仕種である。
男たちは象脚鼓と呼ばれる、象の足のような細長い筒状の太鼓を打ち鳴らして、左右に身体をひねりながら踊る。
他にワ、プーラン、ジノー、サニー、ラフ族などの踊りを見た。野外での踊りを見て気づいたのだが、踊りに2つの型があった。それは、チンポー・ジノー・ワ・プーラン・サニ・ラフ族のなどのように、大変活発で動きが激しく、飛んだり跳ねたりする踊りの型と、タイやハニ族のように、動きが小さく、ゆったりと優雅に踊る型である。
日本舞踊は庶民的な踊りではないが、盆踊りは庶民の踊りで、動きが大きく活発である。それからすると、タイやハニ族の踊りは日本舞踊に通ずるものがあり、チンポー・ジノー・ワ・プーラン族などの踊りは盆踊り的であった。
2022年4月25日追記