古き良き時代のオセアニア オーストラリア⑭
中央縦断道路
南オーストラリア州のアデレードから中央オーストラリアのアリススプリングに向かう、アンセット・パイオニアのバスに乗って、中央縦断道路を北上した。
空はからりと晴れていた。雲なんてどこにもない。スペインのアンダルシアの青空、カリフォルニアの青空、サハラの青空よりもまだすごいのだ。
大地にはマルガという針葉樹の灌木と、地に這いつくばった灰色のソルト・ブッシュが生えているだけで、視界を妨げるようなものはない。褐色の大地のイメージは、これらの木々に覆われていることで、少々薄れる。
しかし、大地の色は確かに褐色。アデレードを出発したバスは、先程から赤褐色のブルダストと呼ばれる土埃を後ろに舞い上げている。それは、吹けば飛ぶような軽い土埃ではない。いささか鉄分を含んだ重い土なのだ。それが時折竜巻に巻き上げられて、数千キロも離れた東部のシドニーまで飛んでゆき、屋根瓦を赤褐色に染めることがあるそうだ。
ときどき大型の長距離トラックが砂埃を巻き上げて行き交う。それには「ダーウィン」と書いてあるのもある。これはダーウィン・アデレード間の、中央オーストラリア縦断運送会社のロード・トレインと呼ばれるトラックなのだ。
トラックには2人のドライバーが同乗し、約3200キロを交互でぶっ飛ばすのだ。つい居眠りをして脱道しても、崖から落ちるようなことはない。しかし、慣れていないと脱道したのに驚いてハンドルを切り過ぎ、転覆することがある。
よく見かけたのは、オーストラリアにだけあるロード・トレインという、6台も7台も貨物車を牽引して路上を走るトラックが、何両か横倒しになっている光景。乾物や果物、牛や羊が満載されているのもあった。
中央オーストラリアを縦断している道というのは、荒野にブルドーザーを1回走らせただけの所が多い。しかし、今では、そうして出来た道を、アメリカの大型ピッチマシンを入れて、簡易舗装しかけている。やがて、このだだっ広い中央オーストラリアにも、ハイウェイ時代がくるだろう。
ポート・オーガスタを出発して2時間くらいすると、“アイランド・ラグー”という真白いソルトレークに出た。
中央オーストラリアの大半はかつて海だった。それが火山や地形の隆起によってポート・オーガスタのあたりが塞がれたため、海水が干上がってできたソルトレークが多い。
ここからさらに1時間ばかり進んだところに、新しいウーメラの町があった。これは中央オーストラリア・ロケット開発センターに勤める人々の住宅地であり、研究基地であった。