古き良き時代のオセアニア オーストラリア⑦
シドニー郊外の放牧
オーストラリアは、大陸東海岸の山脈がもう100キロばかり西に寄っていれば、世界一豊かな国になる自然条件を充分に備えていたのだろうが、悲しいかな海岸からわずか100キロの地を北から南に走っているのみで、他には山と呼べるような木の生えている高い山はほとんどない。
その山脈のシドニー西郊外に、ブルー・マウンテンの中に“スリーシスター”と呼ばれる有名な観光地となっている岩山がある。とにかく、山脈の東部は比較的降雨量が多く、年中緑に覆われ、放牧が盛んだが、西側はほとんど降雨がない。中央部にはもう9年間も雨が降らないので、12、3歳の子供たちが雨という言葉すら知らないところだってある。しかし、そんな地域は日本の3、4倍の広さでしかない。
オーストラリアの総面積は777万平方キロで、日本の約21倍の広さ。その3分の1が砂漠。これは乾燥した土地、残りの3分の1が農業開発されている。3分の1といっても日本の7倍もの面積なのだ。
オーストラリアは枯れたような赤茶けた大陸だとされているが、それは高度数千メートルもの上空からのことで、シドニーからメルボルンに向かう道沿いは、必ずしもそうではない。
道沿いにはオーストラリア全土にあるガムの木の林があり、牧場にはグリーンベルトが敷き詰めてあった。
ガムの葉はライトブルーからダークブルーと種々雑多な色に見えるが、とちらかと言えば柳の葉のような感じがする。しかし、それを正確に表現するのは難しい。というのは、オーストラリアの木は殆どがガムで、その種類がなんと五百数十種もあるから。
そのガム林が焼き払われて牧草が生えている牧場は、どこかまだ未完成という感じがする。
オーストラリアでよく目にするのは、緩い丘であり、クリーク(小川、普通は水がない)があって、枯れ木がそこそこに立ち、枯れた大木がふてくされて横になっている感じなのだ。それだけに開拓中という感を覚える。
しかし、現在ではアメリカの機械文明輸入によって、莫大な費用と機械力を駆使して、このガム材をブルドーザーで押し倒し、あっという間に整地された立派な牧場ができている。
いずれにしろ経営規模の大きいことはアメリカに次いで世界第2位だ。だから企業と呼んでも不思議ではなく、実際今日のオーストラリア人たちは、1つの会社をつくると同じような形態で牧場経営のために投資するようになっている。