古き良き時代のオセアニア オーストラリア③
開放的な町シドニー
私がシドニーに着いてまず驚かされたことは、実に美人が多いことだった。何よりミニスカートに、よく似合ったカモシカのようなヒップと長い足が、いっそう美しく見せているようだ。
各民族の混血児には美人が多いと言われるが、オーストラリアは混血児が多い。第二次世界大戦後のヨーロッパ各国の食糧欠乏と混乱から逃げ出した各民族が、食糧の宝庫といわれたオーストラリアの地に続々と移民して来たので、アングロサクソン、ゲルマン、ラテン、ギリシア、スラブ、アラブ系などの混血が多いのである。
彼女たちには、北欧女性のような肌の白さはないが、イタリア女性のような健康的な肌色をしている。栗毛もいれば金髪もいる。黒髪もいればライト、ブラウンもいる。食糧豊かな国で、年がら年中バターや肉を食っている関係から、身長も高く、体格が良い。
余談だが、シドニーに着いた翌朝、宿泊していたYMCAのメニューを見て驚いた。なんと朝からビーフステーキやマトン、チキンにベーコンエッグアンドソーセージなんてのがある。その肉類以外にコーンフレークが付く。
こんな調子で3食肉を食うのだから、体力がつく。私の知っている限りでは、世界一ヘビー級の朝食だった。
食べ物だけではない。シドニーの街は実に開放的なムードが、中心街のピットストリートやジョージストリートにみなぎっていた。シドニー中心地のオーストラリア・スクエアには若者がたくさん集まっていた。私が撮影しようとカメラを向けると、ちょっと待ってと言って、坐禅を組んで見せた。そして、「ゼン・ブディスト」と言って目を閉じた。
女性にカメラを向けると、ちょっとしたポーズを取る。別に気取っている訳ではないが、何気なくポーズする。
「ネエー、一枚送ってくださる。私の住所と名前を教えとくわ」
とサラリと書いてよこす。たいていの国では、若い娘にカメラを向けると、逃げるか、顔を隠すか、表情が硬くなる。それに名前も住所も、こちらが尋ねたってなかなか教えてくれない。ましてや年齢などとうてい駄目なのだが、オーストラリアの女性はいとも簡単に教えてくれる。
「どうして年齢を隠さなきゃいけないの、年齢を隠したがるのは40、50歳になってからでしょう。若い女性が年齢を隠すなんておかしいわ、あなたが私に年齢を尋ねたってちっとも失礼じゃないわよ」
スー・ウエンディという若い娘は初対面の私にこう言った。この感覚はヨーロッパやアメリカにはなかった。
スーは21歳でデパートに勤めていた。彼女は、6時の閉店になると、客がいようがいまいがレジを締めて、ピタリと仕事を止めると言った。客からすれば実にけしからんことだが、客のほうも、自分の勤め先ではそうするのだからちっとも頭にこないのだそうだ。