ユーラシア大陸横断鉄道の旅㉓ 阿拉山口→ドルジバ(カザフスタン)

 私は、ユーラシア横断鉄道の旅を5月18日に終えたが、中国の国境阿拉山口からアルマ・アタ間だけは乗り継ぎが出来ていなかった。その後の6月20日に国際列車が予定通り開通したとのことで、1992年8月9日、成田から北京経由で再度ウルムチを訪ねたので、阿拉山口からアルマ.アタまでを先に紹介する。

 国際列車は、ウルムチーアルマ・アタ間135キロを約34時間で走る。今はまだ週に1往復だけだが年内には2往復になるそうだ。

 8月11日、午前8時40分、ウルムチ駅に着き、国際列車に乗り込む。車体にはカザク語で「スベク ジョリー(シルクロード)」と大きなオレンジ色の文字が書かれている。

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国際列車「シルクロード号」

 私は1号車の8号室31番で下段。4人部屋の相客は、カザク族の中年夫婦と子ども1人。もう1人はイラン系アメリカ人で、54歳のハワイ大学助教授。

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烏魯木斉(ウルムチ)-アルマ・アタの標識

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同室のカザク族親子

 9時16分、満員のシルクロード号は、汽笛を「ピー・ポー」と吹き鳴らし、「ジー」と鳴るベルで出発した。シルクロード号は急行なので大きな駅にしか止まらない。

 隣室に日本人らしき人がいると思っていたら、東京新聞の記者垂水健一さんだった。彼はこの国際列車を取材するためアルマ・アタまで行くと言う。

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無人地帯の踏切

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荒野を走るシルクロード

 奎屯で機関車を換え、さらに走る。精河を通過して、荒野を走り続け、阿拉山口には午後7時に着いた。時差があるのでまだ日はかなり高い。移民官と税関員が車内に入ってくる。パスポートを渡すと、車外で待つように言われてプラットホームに出る。

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阿拉山口駅に到着

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阿拉山口駅のプラットホーム

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阿拉山口近辺の情景

 駅には人が多く、公安員や軍隊もいる。4ヶ月前の無人の駅とは一変して活気がある。阿拉山口の駅は海抜371メートルで、夏は摂氏40℃、冬は零下40℃にもなる。今は夏だが夕方は涼しい。

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阿拉山口駅での筆者

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プラットホームに整列する公安員たち

 約2時間待って、9時15分にやっと出発。カザク側の国境駅ドルジバまでの約13キロをゆっくり上る。アルタイ山系と天山山系の間にある、海抜500メートルの峠を越して、9時40分にドルジバ近くに着く。太陽は9時30分に山頂に没したので、もう暗くなりかけていた。車内で約2時間も待たされ、ドルジバ駅に着いたのは11時30分。時差が1時間あるので、現地時間は10時半。

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ドルジバに向かって走るシルクロード

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4月に訪れた中国側の国境検問所の建物

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カザク側の国境検問所のテント

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シルクロード号は、ドルジバ近くでしばらく停車していた。

 中国とカザク国でゲージ(軌道の幅)が違うので、駅からかなり離れた車庫で台車交換をする。乗客は車内にいてもよいが、外に出て待つこともできた。私は外に出て、駅構内の両替所で、1米ドルを120ルーブルで交換し、構内のバーでビールを飲む。ビール大瓶1本24ルーブル、大きな羊肉の串焼き1本20ルーブル、肉饅1個6ルーブル、キュウリの漬物1本が1ルーブルと安い。バーではたくさんの現地人が椅子に座って飲んでいるが、若い人が多い。カザク族の親子もいた。「ドルジバ」はロシア語で、カザク語では「ドスティック」といい、「友好」という意味だそうだ。

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ドルジバ駅構内のバー

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駅構内のバーにいたカザク族の親子

 バーでは、撮影しても問題にはならなかったが、外に出て、羊肉の串焼きを売っている男女5、6名を撮影したら1人の男が大声を発して拒否した。すると公安員が2人やってきてカメラをよこせという。私は急いで小さなオートカメラを懐に入れ、日本語で拒否し、逃げるように現場を離れてバーに入ったら、追いかけては来なかった。後で知ったのだが、垂水さんは、フィルムを抜き取られたという。

 なんと2時間半も待たされ、午後1時過ぎにやっと台車交換が済み、ドルジバ駅を出発したのは1時半だった。まだ国境事務の手続きなどに慣れていないとはいえ、ドルジバ近辺に6時間以上もいたことになる。

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阿拉山口駅のプラットホームに立つ筆者

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