1日遅れの西サモア(1999年12月)西サモア

 南太平洋の西サモアは、日付変更線のすぐ東側にあたるため、世界で最後に日か暮れ、日本との時差は20時間もある。

 私は1999年12月9日の夜、トンガの首都トンガタプから約1時間30分の飛行で、西サモアウポル島にあるフアレオロ空港に着いた。そこから首都アピアまで26km、車で30分弱を要してキタノ・ツンタラホテルに着くと、なんと1日前の8日午後11時55分だった。私はここに3泊4日間滞在する予定である。

 翌日は12月9日を2度迎えることになり、日付変更線という人工的な時のマジックにかかって、なんだか1日得をしたようで、いささか楽しい気分になった。

 南太平洋のほほ中央にあるサモア諸島の西半分を占める島々が、立憲君主制の国、西サモアである。ウポル、サバイイの両主島と7個の小属島からなり、面積は東京都の約1.3倍の2,934平方キロメートルで、人口は17万人。 

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12月9日の夜、ホテルでのサモアダンスショー

  近海にはカツオ、マグロの好漁場があり、南太平洋におけるマグロ漁業の基地としても古くから知られている。

 翌10日、午前10時前から人口3万4千人のアピアの街を見て歩いた。中心街の路地裏に12~3歳の男の子10人ほどが楽し気に群れなしていた。近づいてみると、彼らはコインを賭けて遊んでいた。地面に線を引き、4mほど離れた所から10セネ(約45円)コインを投げ、線を越さない1番近い者が勝ちで、賭け銭を全部自分の物にすることができる。彼らは、何度も何度も繰り返してやった。これは、1種の賭博であるが、いずこでも老若男女を問わず、遊びの原点である。

 私は、陽差しの強い建物の日陰で、夢中になって遊ぶ子どもたちを、子どもと同じような気分になって観察していた。

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ホテル近くにあったサモア風の建物

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首都アピアの街頭で金をかけて遊ぶ少年たち

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縄跳びをする子供たち

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「ガウイポポ」というココナツ採り遊びをする子供たち

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「ケンケンカモ」というじゃんけん遊びをする子供たち

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上は円陣になって遊ぶ子供たち 下は世話になったファシトーウタ村のチレさん(左端)一家と近所の子供たち

 翌11日は日曜日であったが、6時に起床して300mしか離れていない海岸の魚市場へ行った。数10艘の双胴船などが岸壁に並んで結われ、多くの漁師がいた。どの舟にも甲板や箱の中に7、80cmのマグロが何匹もころがっていた。中には1m以上もある。摂氏23℃に朝日が差している。延縄で釣り上げられたマグロは、大きな目をうるませて黒紫色に輝いている。日本でなら1匹数10万円はするだろう。 

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アピアの港

 「この魚、日本ではいくらする?」

 肌の白っぽい2m近くもある巨大な魚を見ていた私に、50代の漁師が尋ねたが、魚の名前も値段もわからなかった。名前を尋ねるとマグロの一種だという。この魚の肉は特上で大変美味いそうだ。 

 「日本では半身が100万円以上はするだろう。」 

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アピアの魚市場で魚を売る女性

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魚市場に並べられた熱帯魚

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船の甲板に、日本では一匹数10万円もするマグロが転がっていた。

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日本では、半身で100万円もするという魚を前に話し合う人たち

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西サモアの乗り合いバス

 男は私をからかうように笑った。漁師たちは、マグロが陸揚げされるのを待っていた。その中に10歳前後の子どもたちがいた。皆釣り糸を手にし、岸壁から糸をたらしていた。セイゴの様な魚や、アジ、イワシ等が釣り上げられた。子どもたちは食べるために釣っているので、魚をビニール袋の中に入れた。これは、遊びを兼ねた食料採取で、子ども本来の野外伝承遊びの1つである。

 朝食後しばらく休み、午前10時、ホテルから4km離れたスキューバダイビングの発祥地とされている、“パロロの深み”で、シュノーケルをつけて、素晴らしいサンゴ礁のカラフルな美しい熱帯の魚たちと遊んだ。私自身、心身を解放する遊び心を感じることができた。私は、2月11日の午後3時過ぎに荷物をまとめてチェックアウトをし、その日のうちに飛行機でフィジーに着いたら、何と2月12日の夜であった。

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バイバセ.ウタ村のツシさん一家と筆者

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ホテルでサモアダンスを見る筆者