ヤップの女性たち(1998年1月)ミクロネシア連邦
1998年1月30日、東京からグアム島経由で西太平洋に位置するヤップ島を訪れた。
空港のロビーで上半身裸の美女に迎えられた。しかし、とっさのことだったので、まるで子供のように急ぎ、いきなりシャッターを押したので良い写真はとれていなかった。いずれにしても、はちきれそうな美しい乳房を堂々と押し出して迎えてくれたヤップの女性には、入国早々から驚かされた。
直径50センチから三メートルもある巨大な石貨で有名なこの島には良質の石がない。島は火山岩で出来ているので良質な石がなかったこともあり、ヤップの男たちは、昔から500キロも南方のパラオのカーブ島までカヌーを漕ぎ、命がけでフエと呼ばれる石貨を運んできた。石貨は円形で、中央に棒を指して運ぶための穴が開いている。最も新しいものでも百年前とされる伝統的な石貨は、村と村、家と家の信用関係を深めるもので、今もまだ通用している。
州都コロニアから南西に約2キロ、ヤシやバイウチ、バナナなどの樹が茂るブラバーツ村の石貨銀行は、村の集会場である“ペバイ”前の道沿いにあり、大小30余個が陳列されていた。そこから更に歩みを進めていると、ジャングルの中からリズミカルな女性のハーモニーがかすかに伝わってきた。その響きに誘われて熱帯雨林の中の薄暗い小道を、1人で不安な気持ちで300メートル程進むと、空が大きく開け、石を敷き詰めた広場に出た。
広場には男は一人も居ないが、2~30名の女性が並んで座り、歌いながら両手を波のようにゆらして踊っている。身につけているものは、“ヌーヌウ”と呼ばれる髪飾りと、“オン”と呼ばれるバナナやヤシ、ニッパヤシの葉で造る腰蓑だけで、上半身は何も身につけていない。その向かいには10人程の中老婦人が座って踊りを見ながらビンローの実を噛んでいる。彼女たちは私の来訪に気づいても、知らぬ顔をしている。ヤップは伝統を重んじ、外国人の自由な振る舞いを許さないという情報を得ていたので、しばらく様子をうかがった。
通訳も案内人もいないので、迷いながら少しずつ近づいて、カメラを指し示しながら中年の女性に英語で話しかけた。
「撮影してもよろしいですか」
彼女は2~3人の女性と相談してから英語とヤップ語のチャンポンのような言葉で答えた。
「撮影は駄目です。見るだけならどうぞ」
「これは、何かの儀式ですか」
「いや、3月1日のヤップ・デーに皆の前で踊るための練習です」
やっとこれだけのことがわかった。それにしても、乳房の小さい子どもから大きな熟女まで順に並んでいる光景は、男にとっては大変珍しく壮観である。
6~9歳までの少女の胸は、少年と変わりないが、10歳の少女の胸は、ビワの実のようにふくらみ、11歳の少女の胸は乳首が突き出た円錐状である。12歳になると、小さな椀を伏せたように2つの乳房がぽっこりとふくらみ、13歳の少女の胸は椀状に突き出し、はちきれそうに輝いている。14歳はもうすっかり娘の胸になり、乳房がゴムマリのようにふくらんで光っている。15歳の乳房は風船のようにふんわりと持ち上がり、乳房がやや下向きになって、成熟した女を主張しているようだ。
16歳から20代後半までは子育て中で多忙なのか、28歳、29歳の2名のみである。
30代の熟女たちの胸は大きく、いろいろな形に垂れ下がってはいるが、いずれも子育てを果した立派な証拠である。
40歳以上は踊りの仲間には入らず、指導する側であり、中央のリーダー格の白髪の老女は63歳。
私は、これまで35年間、世界の多くの民族を踏査し、撮影してきたが、これだけ多くの異年齢の女性たちの乳房を同時に目の当たりにしたのは初めてのことだったので、最初は比較の面白さと女体に魅せられて興奮気味であった。男としての好奇心に駆られて見入っていたが、やがて平常心に戻り、上半身裸の女の身体がごく普通に見られるようになった。
30分もすると、彼女たちは立ち上がり、4人1組になってかけ声を発して手を叩き、中腰になって腰を激しく振り、足を踏み鳴らし始めた。手を波のようにゆらして歌い、踊る。“ツルサケイ”と呼ばれる立ち踊りは、動きの激しい活発な踊りである。
大人と共に踊る少女たちにとっては、これらの踊りが、大人を見習う一種の遊びであり、伝統行事である。だから、10数歳の少女や娘たちも、私が見ていても、近くの熟女が楽し気に振舞っているので、ごく自然に、恥じらうことなく大らかに踊っている。
1時間近くも見ていたが、やがてその場を去り、近くのブラバーツ村を訪ねた。村の子供たちが寄ってきて話し、しばらく一緒にいたので親しくなり、撮影させてもらった。2時間ほど村に滞在し、午後5時頃歩いてコロニアに戻った。
その翌日、観光客の一人として、椰子林の中にある海岸近くの村で行われた子供たちの踊りを楽しく拝見した。村での少女たちは、裸ではなく、ヤップの衣装を身に着けていた。