地球へめぐり紀行

新制中国の望郷編

ユーラシア大陸横断鉄道の旅㉟ フランクフルト→パリ(フランス)

 ライン川の支流マイン川下流の西岸に発展した、人口70万以上もの大都市フランクフルトの駅舎の構内は、天井が高くて大きいカマボコ型。しかも柱がないので広々として明るく気持ちが良い。

f:id:moritayuuzou:20210107191749j:plain

フランクフルト駅構内

 構内には乗り降りの客が多く、モダンな売店が並んでおり、必要なものは何でも揃う。食堂・バー・カフェテリア・書店・雑貨屋・服屋・写真屋・八百屋・果物屋・菓子屋などの店があり、まるで百貨店のようだ。

f:id:moritayuuzou:20210107191753j:plain

パリ行きの標識

 ここは国際線の発着駅なので、プラットホームが10本、20番線まであり、乗り継ぎの待ち合い客も多い。様々な国の客に対応できるように、英語・フランス語・日本語の出来る係員がいる。

f:id:moritayuuzou:20210107191745j:plain

パリ行きの列車

 構内の店を見ているだけでも楽しく、ドイツの繁栄が伺え、目を見張る思いがし、食事も忘れ、あっという間の1時間であった。

f:id:moritayuuzou:20210107191741j:plain

列車に乗りこむ乗客

f:id:moritayuuzou:20210107191757j:plain

パリ行きの出発ホーム

 午後2時52分、13番ホームのパリ行き国際列車は、静かに扉が閉まり、車掌の「ピー」と吹く笛の合図で発車した。101号15番の座席で窓側。ベルリンからと同じく6人用コンパートメントで、相客は若い男性2人だけ。2人とも通路側に座っており、1人は学生風で雑誌を読み、もう1人は背広姿のサラリーマン風で、革製のカバンから書類を出して見入っている。

f:id:moritayuuzou:20210107191802j:plain

食堂車での料理

 3時20分、進行方向左側の丘の南斜面は葡萄畑。丘は茶褐色の大地が広がっている。このあたりは葡萄の産地で、ロマン街道のような風景が続く。

 3時43分、ライン川沿いのマンハイム駅に着く。ここで相客2人が降り、私は1人になった。2、3分停車し、車掌が笛を吹くと扉が閉まって発車。線路沿いには葡萄畑が続き、茶褐色のレンガ造りの家が散在する。

f:id:moritayuuzou:20210107191807j:plain

マンハイムのプラットホーム

f:id:moritayuuzou:20210107191812j:plain

マンハイム

f:id:moritayuuzou:20210112192749j:plain

マンハイム駅のプラットホームに立つ筆者

 4時過ぎにニュウスタドを過ぎると、これまでの平地から山間に入った。トンネルが多く、シラカバ、ブナ、ナラ、アカマツ、ニレ、ドイツ杉などの森林地帯を走る。

 用を足そうと便所に入って便器に座ると、下から風が吹き上がり、尻がやけに涼しい。車輪の音もうるさいことながら、吹き上げが強く、落ち着いてはいられない。この車両の便所は、そこがなく大地に直結する垂れ流し式なのだ。これまでの列車の便所は大地が見えず、こんなに風も吹き上げてはこなかった。山間部でそれほどスピードは出ていないのに、吹き上げはかなり強く、紙がなかなか落ちないので後始末が大変であった。西欧にしては旧式すぎる。

f:id:moritayuuzou:20210107191816j:plain

下から風が吹き上げるトイレ、落とし物をしたらそれまで。

 やがてゆるい斜面を上がった頂上にあるドイツの国境の町サルブルケンに着いた。駅の時計は午後5時12分。この駅でも停車は2分ほどですぐ出発。5時26分にはフランス側のフォルバチに着いた。だが、税関員も移民官も来ない。EC(ヨーロッパ共同体)統合によって、国境の出入国手続きが不要になったからだ。街の様子はあまり変わらないので、国旗を見なければ、国境を越したことさえわからない。

f:id:moritayuuzou:20210107191820j:plain

ドイツ側のサルブルケン駅

f:id:moritayuuzou:20210107191825j:plain

サルブルケン駅のプラットホーム

f:id:moritayuuzou:20210107191829j:plain

サルブルケンの町

f:id:moritayuuzou:20210107191833j:plain

フランス側のフォルバチ駅

f:id:moritayuuzou:20210107191837j:plain

フォルバチの町

 フォルバチは高原の町で、森が多く、褐色の屋根の家々が緑に映えて美しい。列車はこの町から西へ徐々に下って行く。次のベニングの町も、青空の下で森の中に赤褐色の屋根の家々が並び、おとぎの国のような風景が見られた。

f:id:moritayuuzou:20210107191842j:plain

ベニング駅

f:id:moritayuuzou:20210107191847j:plain

ベニング駅のプラットホーム

f:id:moritayuuzou:20210107191852j:plain

フランスの女性車掌 ベニング駅で

f:id:moritayuuzou:20210107191855j:plain

ベニング近くの農村

f:id:moritayuuzou:20210112192837j:plain

ベニング駅での筆者

 やがて山を下り、6時17分、メッツ駅に着く。約10分間停車して機関車が取り換えられ、進行方向が逆になった。この駅で中年の男性1人と若い女性2人が乗って来たが、いずれも座るなり雑誌を読みふけった。

f:id:moritayuuzou:20210107191859j:plain

メッツ近くの農村

 メッツを発つと、あたりは素晴らしい農業地帯であった。麦畑、菜種畑、牧草地など、豊かな大地に、人間の営みが心地よい。フランスが農業国であることは知られていたが、ドイツにも勝る豊かな大地が広がっている。フランス人の自信は、このような大地からきているのだろう。

 列車は時速200キロで2本の鉄路の上を「シャーッ」という快音とともに走る。揺れや音も少なく、ゆったりとして快適だ。

f:id:moritayuuzou:20210107191903j:plain

メッツ駅

 午後8時、太陽が地平線近くになった。両側のなだらかな斜面には葡萄や桃の畑が続いている。このあたりの岩山は、白っぽい石灰岩が多く見られるので、大地はアルカリ性で、果物の栽培には適しているのだろう。

 列車は、メッツ以後は止まることなく、沈み行く太陽を追いかけるように西のパリへと快走した。やがて、モンマルトの丘やエッフェル塔が夕陽に映え、一幅の絵のように見えて来た。

f:id:moritayuuzou:20210107191908j:plain

パリ東駅舎

 列車は定刻の9時2分、パリ東駅に着いた。夕暮れのせいか、構内は人出が少なく、閑散としていた。モスクワ、ワルシャワ、ベルリン、フランクフルトと同様に、パリ東駅も改札口はなく、ホームに自由に出入りできる。ヨーロッパでは車内で厳しく検札し、改札口は重要でないようだ。

 駅舎の撮影をしてから、駅前からタクシーでノルマンディ・ホテルへ向かった。

f:id:moritayuuzou:20210107191912j:plain

宿泊先のノルマンデイ・ホテル