ユーラシア大陸横断鉄道の旅㉑ 烏魯木斉(ウルムチ)

 4月29日、ウルムチは曇っていた。南北に続く新華南路にある華僑飯店の12階からは、東に冠雪の天山山脈、西に樹木の生えていない褐色の岩山が望める。街には20階建てのビルがあり、イスラム寺院もある。北京からすると西の果てのように思えるが、ウルムチは1つの地域(国)の中心なのである。 

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華僑飯店から北を見た、烏魯木斉の中心街 新華南路

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華僑飯店から西南を見た烏魯木斉の町

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華僑飯店から南側を見た烏魯木斉の町

 中国西端の新疆ウイグル自治区は、行政区の中で最も広く、160万平方キロもあり、全国の6分の1の面積を占めている。なんと日本の4・3倍もの広さ。人口は約1300万人で、中国56民族のうち47民族が住んでいる。 

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烏魯木斉中心街のデパート

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烏魯木斉中心街の民族用品デパート

 最も多いウイグル族は人口594万人で南部に多く、麦や葡萄などを栽培する農民が多い。2番目に多い漢民族は528万人で、北部に多い。3番目のカザク族は90万人で、主な生業は牧畜業。次の回族は57万人で、農業が主である。蒙古族は11万7000人、キルギス族は11万2000人で牧畜業が中心である。

 

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中心街のバス停

  ジュンガル盆地の南端で、東部天山山脈北麓の標高887メートルにあるウルムチは、新疆ウイグル自治区の政治、経済、文化、交通の中心であり、ウイグル、漢、回、カザク、蒙古族など、13民族が暮らす、人口125万もの大都市。しかも、鉄鋼・石油化学など近代的な設備を誇る大工場が多い工業都市でもある。 

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フラフープで遊ぶ少女

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学校の校庭で遊ぶ子供たち

 中国は日本の25倍もある広い国。北京とウルムチは約4000キロも離れているので、時差が129分もあるが、北京標準時なので日の出が遅い。日本とは189分もの時差がある。

 ホテルの朝食は、北京時間の9時からだった。別棟1階の食堂に行くと、中国招商国際旅行社の日本部部長、王建軍さん(42歳)と大自然旅行社の日本語案内人・王星さん(35歳)が待っていた。

 この中央アジアを経由するユーラシア大陸横断鉄道の旅は、世界で初めての試みであるが、特にウルムチから西端の国境にある阿拉山口駅までの北彊鉄道は、開通したばかりでまだ試運転中であり、外国人には許可されていなかった。

 私は1年前からこの旅の準備を始め、昨年(1991)10月に北京で中国招商国際旅行社社長の張宜永さんに会って、今回の旅の件を頼んだ。彼は、中華全国青年連合会の副秘書長をしていた時、私が理事長をしている日本の青少年交友協会との共催で、「北京かち歩き大会」を2度実行してくれた人。その彼が協力してくれることになり、上海生まれで北京在住の王建軍さんを紹介してくれた。

 中国招商旅行社の協力によって、軍や公安部辺防局などの理解を得て、ウルムチに本社のある大自然旅行社の現地案内人がつくという条件で通行の許可が下りていた。

 王星さんは、ウイグル族の長身な好男子でウルムチ生まれだが、広州で日本語を学び、解放軍に入隊して登山を始めた。2年前から軍の傘下にある旅行社に勤め始め、日本語の案内人となっていた。

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中心街の日本語表記もあるレストラン

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街頭で焼き肉を売っていたウイグル族の女性

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街頭の店

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街頭で食べ物を売る店

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売られていた各種調味料

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街頭での靴の修理屋

 私たちは、朝食後、阿拉山口からカザフ共和国のドルジバへの国境越えの許可をとるため、公安部辺防局のウルムチ支局を訪れた。

 1時間以上も待たされたが、答えは「否(イー)」であった。阿拉山口までは開通しているが、まだカザフ側へ行く汽車がなく、国境地帯の13キロを歩いて越すには軍隊の護衛が必要であり、前例がないので許可は出せないとのことで、線路沿いの国境越えは断念し、後日の正式開通を待つことにする。

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家畜の肉売り場

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烏魯木斉に多い焼き肉専門店

 私たちは明日汽車で阿拉山口まで行き、そこから公安部の武装警察関係の車で、天山北路を通って伊梨経由でカザフ共和国へ行くことにした。そのため、運転手の馬さんは午後から1人で500キロもある阿拉山口に向かい、私たちが着くのを現地で迎えてくれることになった。

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街頭に並ぶ屋台

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ウイグル族の乾燥に強い厚くて大きなパン

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街頭の焼肉店

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街頭のウイグル族用の店

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街頭で売られていた揚げパン