新制中国の望郷編⑨ 浙江省 紹興酒のふるさと
私は、1993年1月6日、浙江省東端の寧波を夕方の5時35分の汽車に乗って去り、紹興駅には8時に着いた。プラットホームで案内人の唐毅氏(27歳)が迎えてくれ、すぐに紹興飯店に案内された。小柄な彼は、杭州大学で日本語を学んだそうで、なかなか上手に話す、よく気の利く男であった。
翌日は朝から小雨が降り、霞んで視界が悪かった。紹興酒で知られた紹興には醸造工場が多い。午前8時から紹興酒醸造工場を見学した。日本の造り酒屋の工場とあまり大差ないが、酒を入れる樽やガラス瓶はなく、陶磁器の瓶がたくさんあるのが違っている。
紹興酒の起こりは、昔、この辺の家では娘が生まれると、酒を造って陶磁器の瓶に入れて密封し、家の床下に埋めて置き、結婚する時に掘り出して祝い酒としたことによるとされている。
瓶の中の酒は、10数年前もの間に陶磁器の色が染み出て飴色に染まる。だから、日本酒と同じ醸造酒だが、老酒でまろやかになり、しかも飴色になっているので一種独特な味と香りのある酒になっている。
中国の酒は大きく分けると、白酒と黄酒であるが、紹興酒は黄酒に属する。糯米・酒葯、麦麴を原料とするが、アルコール含有量は日本酒とほぼ同じ16度前後。
老酒で最も有名な紹興酒は、2000年以上も古くから、米の生産地である紹興近辺でつくられる醸造酒。酒は稲作農耕社会につきものの生活文化。
今や紹興酒の名は東アジア全域に知られ、特に日本や台湾では有名。そのせいか、輸出用の生産に追われ、工場は多忙とのこと。それに、展示室以外は秘密保持のため撮影禁止であった。醸造そのものには大した特徴はないのだが、秘密保持が多く、もったいぶっているようで、取材協力もなかったし、早めに切り上げた。
2022年3月24日追記