ユーラシア大陸横断鉄道の旅㊴ リスボン→ロカ岬

 予定通りリスボンのサンタ・アポロニア駅に着き、ティボリ・ホテルに1泊した翌日の5月16日、リスボンは曇っていた。ユーラシア大陸を横断したという以上、ヨーロッパ大陸の最西端であるロカ岬を訪ねないわけにはいかない。

 ロカ岬を案内してもらうため、前もって連絡しておいた、リスボンに13年間住んでいる中村みなみさんに来てもらった。

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海岸沿いのリスボン

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リスボンの古い家

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海岸沿いのリゾート地

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古いリスボン市庁舎

 中村さんによると、ポルトガルは、まだ貴族が支配している社会だという。この国の貴族は土地・家・財産を持っている。大半の農民は土地を地主から借りており、貧しいのだそうだ。一般的に教育レベルが低く、大衆の社会的な意識が弱い。義務教育は9年だが、1年生から落第する子がいる。職業・身分・地位などが生まれながらに決まっているので向上心が弱く、親が子に夢を託するということがない。国民は、地縁、血縁に強く縛られ、改革、改善がすごく困難。そのため今も貴族である地主だけが豊かなのだそうだ。

 ポルトガル人は他人の足をよく引っ張り、仲間で力を合わせると言うことが出来ない。ある意味では個人主義で、心の豊かさを知らない。だから物による豊かさを求めようとするので、まずは着飾ることが豊かさだと思いがちだそうだ。 

 なんだか、東洋のわが国にも類似する点もあるように思うが、いずれにしても2、300年前からあまり変わらないし、変えようとせず、わが道をマイペースに進んでいる国のようだ。

 ポルトガル人が初めて日本の種子島にやって来て鉄砲を伝えたのが1543年である。当時はポルトガルの方がはるかに発展し豊かな文明国であって、日本は大きな影響を受けた。

 日本とポルトガルとは、ユーラシア大陸の東端と西端でありながら、400年以上も前から深い文明的かかわりをもっている。鉄砲もキリスト教も、雨合羽や天ぷら、カステラ,コンペイトーなどもポルトガル人の渡来によって伝来した。また、ポルトガル語には「屏風(びょーぶ)」なる日本語があり、お互いの交流によって影響し合ってきた。しかし、今や日本は日の出の勢いで発展し、世界一の繁栄国と言われているが、ポルトガルはEC諸国の中でも経済的発展が最も遅れた国である。

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遥か遠くに見えるロカ岬

 リスボンのカフェテリアで、中村さんからポルトガルのおおまかな現状を聞いた後、ロカ岬を訪ねることにした。タクシーを頼んで、45キロ北西にある“CABO DA ROKA”、ロカ岬に着いたのは丁度正午だった。

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ロカ岬

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ロカ岬の灯台

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ロカ岬の灯台事務所

 まず、海抜140メートルの絶壁の上にある灯台を訪ね、そこの事務所で「ロカ岬訪問証明書」を発行してもらった。その後、ロカ岬の西端を訪ね、突端の岩の上に立って万歳をしている様子を、中村さんに撮影してもらった。これで、ユーラシア東端の釜山から西端のロカ岬まで踏査したことになった。

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ロカ岬の先端に立つ筆者

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ロカ岬の記念碑そばに立つ筆者

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ロカ岬訪問証明書

 岬は、一面に野菊のようなカモミラの花が咲き乱れていた。岬から見渡せる大西洋の大海原は、故郷の足摺岬で見る太平洋の紺碧とは違って、曇っているせいか、緑青色。

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野菊のようなカモミラの花

 これより西にはただ海があるだけ。眼下の岩に白波がくだけ、潮騒が響き、風が肌に心地よい。海面にウミネコが飛び交い、漁船が小さく見える。

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ここより西には海があるだけ

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岬の先端から下を見る

 ロカ岬で大西洋を一望してリスボンに戻った。リスボンでは遅い昼食をした後、ポルトガル大航海時代を記念した「発見のモニュメント」と16世紀の建築物「ベルンの塔」などや古い街並みを観光した。そして、夕方中村さんと分かれ、明朝早くスペインのバルセロナに向かう準備をした。 

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遅い昼食をとったリスボンの屋外レストラン

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屋外レストランのポルトガル料理

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屋外レストランでの筆者

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大航海時代を記念した「発見のモニュメント」

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16世紀の建築物「ベルンの塔」を背にする筆者