古き良き時代のオセアニア㉗ ニュージーランド
タウポ湖のマス釣り
トンガリロ国立公園を案内してもらった翌日、エドワルド君は、再び私をジープでタウポ湖へ案内してくれた。
「日本人がたくさん来るんですがねえ。私の船に乗ってフィッシングしたのは、あなたが初めてだ。世界各国からお客があるのだが、どういうわけだか日本人はフィッシングを好かんですなあ……」
エドワルド君が交渉して、無料で乗せてくれた船長は、すげすげと日本人評を展開した。彼は、日本人がマスの多いことで世界的に有名なタウボ湖で、フィッシングを楽しまないとはセンスがないといいたげであった。
確かに日本人の商社員なり旅行者は、外国の地であまり釣りなどしない。するのは麻雀かゴルフか賭け事。特にオーストラリアのどこに行っても、ゴルフ場に行けば必ず日本人がいる。
日本では広い土地を要するゴルフ、レジャーは非常に高くつくし、ハイクラスのレジャーだろうが、土地が有り余っているオーストラリアでは、一番安いレジャーがゴルフであった。だから、土・日曜日ともなれば日本人がわんさか押し寄せていた。
ニュージーランドでもゴルフは安いレジャーで、フィッシングの方が高級なのだと言う。ところが日本人の感覚としては、“魚は釣るものではなく食うもの”的なところがあり、ましてや淡水魚のマス釣りなどをレジャーにしようとはしない。
ニュージ―ランド人に言わせると、フィッシングの方が遥かに高級で上品で優雅なレジャーだというのだから、日本人がそれを敬遠するのは腑に落ちないわけだ。
「こんな水のきれいな湖は初めてですよ。日本に帰ったら宣伝しておきます。」
私は、無料で乗船させてくれたお礼にそう言った。しかし、訪れたことのあるアフリカのマラウイ湖のほうが水が澄んでいて、魚も豊富だった。何よりも、タウポ湖で、50センチも大きなマスを釣り上げる気持ちは最高であった。それにフィッシングゲーム用の艇身十数メートルもあるモーターボートで、静かなタウポ湖をフルスピードで走ってくれた船長に、2時間余りも乗船していたことへのお礼の言葉を告げ、船を下りた。