古き良き時代のオセアニア オーストラリア⑳
北端の町ダーウィン
世界でビールを一番の飲む国はドイツで、1人で年間平均33ガロン(1ガロンは4.5㍑)。次がルクセンブルグで31ガロン。第3位がオーストラリアで28ガロン。しかし、ダーウィンのある北部特別州ノーザン・テリトリーだけでは、1人当たり50ガロンで世界最高である。
私は、そのビール飲みの最も多いダーウィン郊外パラップで、現地の人たちと一緒に飲んだ。
オーストラリアには面白い習慣があって、お互いにビールを奢りあって飲む。2人のときは必ず2杯ずつは飲む。5人いれば5杯のビールを飲むことになる。
ダーウィンで知り合った連中5人は、次から次に飲み干す。ある者は無口で、またある者は口が裂けるほど大口開けて笑ったり喋ったりしながら飲む。
私は体質的に飲むとすぐ顔が赤くなる。しかし嫌ではないので、つい飲んでしまう。
ダーウィンは暑いので、いくら飲んでもすぐに汗と化す。爽快な気分を味わうために冷たいビールを流し込むだけとでもいうように、ゴクリ、ゴクリと音高くよく飲む。
「どうして、こうもたくさん飲むのだ」
「別にたくさんでもないし、理由もないよ」
「ビール好きなのか」
「好きだねえ、大好きだ。女の次にな」
23歳の土木技師ロバートがこともなげに言った。彼はブリスベンで高校を卒業後、ダーウィンに来て働いていた。
ダーウィンは僻地の上に熱帯地方なので、労働者不足だから政府が人口増加と労働者募集を兼ねた政策から、労働条件が非常によく、3、4年働けば、たいていの若者は金を貯めて南部に帰ってゆく。
しかし、今日では労働者も多くなっているので、やがて州都として発展し、大きくなるだろう。しかも、郊外のパラップ地方が急速に発展しつつある。海岸近くの小さな半島の先にある現在の市街は、町の端になってしまうに違いない。
ダーウィンはチモール海に面し、バサルス半島によって波防されている良港。この町の1940年頃の人口は僅か5000だったが、29年後の現在の人口は約27500。しかし、女性は男性5人に1人の割合。だから若い女性でもいれば、大半の男が目の色変えて見つめる。
「ロバート君、君は何杯飲めるんだ」
「さあ、分からんねえ。しかし、一日中かければ40杯は飲めるかな」
彼は笑いながら、グイッとグラスを飲み干した。彼らはもう10杯以上飲んでいる。
「ビールを飲むのに理屈などいるもんか。ビールがあるから働くんだ。ビールを飲んでいる時が一番楽しいんだ」
ロバートは酔っているのか大声で言って、「おい、そうだろう」と仲間たちに相槌を求めた。