古き良き時代のオセアニア オーストラリア⑧

グリーンアイランド

 私は、シドニーからアンセット・パイオニアのバスで、クイーンズランド州ブリスベン、ロックハンプトン、タウンズヴィル、ケアンズと北上した。

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モーテルの庭に停車しているアンセット・パイオニアのツアーバス

 クイーンズランド州北端にあるケアンズの町から、約27キロ沖合にあって、舟で1時間半のグリーンアイランドを訪ねた。

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ケアンズの町のホテル

 この島は、グレート・バリアリーフの中にあるサンゴ礁で、30メートルも伸びたヤシの樹と、熱帯広葉樹の生い茂る僅か0.13平方キロメートルの広さ。島の周囲は、干潮時になるとリーフが現れて、なんと2倍以上の広さになる。

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サンゴ礁ノ島

 サンゴ礁が海底から顔を出すと、ところどころに水溜りができて、20センチほどの魚がピチピチ跳ねている。私は、魚なんぞに目もくれず、潮が引き去ったサンゴ礁の上をゴムゾウリを履いて歩き回った。

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舟から見たグリーンアイランド

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グリーンアイランドの桟橋

 珍しい貝や海藻が空気にさらされている。大きな貝に手を触れると、ピューと水を吹き出して、顔にひっかけられた。とっさのことで思わず口を開けたら、またもや口の中にピューとやられ、塩からい水をグイと飲んでしまった。

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干潮時に現れた砂浜

 褐色の大きなヒトがいた。ヒトデはサンゴを喰うそうで、近くにいるのは殺されてしまうのだが、まだ生きていた。ヒトデは浅い水の中で実によく動く。足を盛んに動かして移動する様は、想像の火星人に似ているような気がした。

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ヒトデ

 そこそこに見て回り、ヤシの木陰にあるレストラン兼ホテルにとって返し、一眼の水中眼鏡を借りた。

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レストラン兼ホテルの野外カフェテリア

 グリーンランドには、L字型の長い桟橋があり、どんな干潮時でも船が着けるようになっている。桟橋の突端は世界的に有名な海底公園の中心であり、潜望塔があって、長方形の鉄製の箱が、海底に据え付けてある。その世界一素晴らしいと定評のある海底公園をじかに見ようというのである。

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桟橋の突端は海底公園になっている

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桟橋突端に設置された潜望塔の窓をのぞく女性

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海底の潜望塔の窓をのぞく筆者

 海中に潜って、人差し指を近づけると、濃褐色に白の大縞2本、頭部と腹にある3、4センチの小さな魚のクマのみが、尾をピュピュと振って指先に近づき、チュッとキッスをした。そして、くるりと向きを変え、ひも状のイソギンチャクの中に引きこもった。

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イソギンチャクとクマノミ

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ひも状のイソギンチャクに隠れたクマノミ

 無数の造礁サンゴが約3千万年もの歳月をかけて築いたといわれるサンゴ礁は、20メートルもの底がはっきり見られるほど澄んだ海中にさまざまな造形を施し、色鮮やかな魚に格好の住処を提供している。

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スズメダイ

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緑色に映えるサンゴ

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水中眼鏡をつけた筆者

 このサンゴ礁のグレート・バリアリーフは、ニューギニア沖からオーストラリア大陸の北東岸沖まで続き、延べ2000キロにも及ぶサンゴ礁の王様なのだ。

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ハタゴイソギンチャクに隠れた魚

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サンゴとソラスズメダイ

 私の他にはオーストラリア人が5人海に潜っていた。なんと言ったって海に潜って魚と戯れ、指にキッスされるなんてことは、ここしかあるまい。

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ハタゴイソギンチャクとチョウチョウウオ

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ミノカサゴ

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ハタゴイソギンチャクとチョウチョウウオ

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海岸の砂地に群生する稚魚

 桟橋の袂には稚魚が群棲していた。深さ1~2mの所が最も海藻が繁茂し、魚が多かった。なんとなく海に抱擁されているような快感を覚え、興奮の時を過ごした。

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講談社発行のオセアニアの旅を紹介した拙著