トルファンの町の様子(1990年8月)
私は、新疆ウイグル自治区のトルファンには、1979年9月と1990年8月の2回訪れた。
トルファン盆地は、周りを丘や岩山に囲まれている。最も低いところは、海面下150メートルで大変暑く、乾燥しているので、摂氏40℃を超える日が年に30日以上もある。
大変厳しい立地条件下にあり、年間降雨量がわずか16ミリなのに、蒸発量は、3000ミリもある。人はこんなに厳しい自然環境下で、どのようにして生活しているのだろう。
トルファンには、山から流れる川がない。地上の用水路では、途中で蒸発して水を得ることができなかった人々が、80キロも北の天山山脈山麓で、地下水を50メートルもの深さに掘り当てて、地下水溝を作って水を引いた。その最長が80キロで、最も短いのは4キロくらい。
“カルジン”と呼ばれる地下水溝は、2千数百年も前から、先祖代々守り続けられ、いかなる民族が侵攻しても、このカルジンだけは破壊しなかったという。
トルファンとはウイグル語で“緑の多いところ”という意味。周囲は燃えるような乾燥地帯で、いかなる動物も棲息しないのに、人間は遠くからカルジンで水を引いて、樹木を植えて熱砂と熱風を防ぎ、農作物を栽培して緑の楽園を営み続けてきた。
天山山脈の南麓を走る426本の地下水溝によって支えられている、トルファンの人口は16万7000人と言われているが、その大半はウイグル族の人々。
8、9月を除いて1年中雨はないが、いつでも天山山脈の雪解け水がカルジンによって豊富なので、農作物の生育には大変好条件である。特産品は、葡萄、ハミ瓜、綿があり、他に白菜、人参、キャベツ、トマト、キュウリ、胡麻、タマネギなど。穀類は麦が主で、米は少ない。
なお、日本語の胡瓜や胡麻、胡坐などは、かつて東の漢民族から胡(えびす)族と呼ばれていた、ペルシア系の人々が住んでいた、この地方から渡来した名称とされている。